令和元年5月、国賓としてトランプ大統領を招き、日米首脳会談も一定の評価を受けました。その立役者となったのはスーパー通訳と称される高尾直(たかお・すぐる)さんです。高尾直さんは、一般の通訳ではなく、外務省の国際法局条約課主席事務官(2003年入省)です。トランプ大統領からは「総理大臣ジュニア」とも呼ばれ、霞が関ではその名前が鳴りとどろき、安倍首相の地球儀外交を支える人物です。今回は、その地球儀外交を支える3つの秘密を紹介します。
高尾直さん経歴プロフィール
高尾直さんは、普段は外交政策の仕事をしており、安倍首相が英語圏に外交の際は通訳として同行、世界中どこにでもいく「地球儀通訳」として仕事をされています。通訳の秘訣は、意図を持ってメッセージを伝えることだそうです。高尾直さんは、これまでに電話会談を含めて30回以上も通訳として関わっています。
高尾直さんは、アメリカ生まれ、5歳までと12~16歳をアメリカで過ごした帰国子女です。中学3年で帰国、わずか2か月の受験勉強で名門の開成高校に入学し、東京大学法学部を卒業しました。外務省入省後にハーバード大学大学院ケネディ・スクールで修士号を取得するなど、申し分のない一流キャリアの持ち主です。趣味であるピアノはプロ並みの腕前で、リサイタルを開けるぐらいだそうです。
安倍首相の地球儀外交を支える3つの秘密
1、世界中どこにでも行く「地球儀通訳」
英語の通訳としてアメリカ、イギリス、インド全てに高尾さんが同行します。アメリカ英語だけでなく、さまざまな国の英語に対応できる語学力を身につけています。2019年5月、マイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、パトリック・シャナハン国防長官代行の三役そろい踏みと会談した訪米の際も高尾直さんが同行して外交を大成功に収めています。
2、安倍首相の発言の「行間を読み取る」
2019年1月のスイス・ダボス会議に合わせて日本を売り込むイベント「ジャパンナイト」で、安倍首相が「長州」と「会津」に言及しました。高尾直さんは、対立関係にあった「長州」と「会津」をどのように訳したのでしょうか?
安倍首相は、次のように言及しました。
「かつては長州の酒米をですね。会津の酒屋さんが使うってことはありえなかったわけではありますが…」
高尾直さんは、次のように訳しました。
The people would never imagine that rice made in Chosyu would be bought and used by the Sake craft waters in Aizu.Because of the traditional rivalty beteen Chosyu and Aizu.
「長州産の酒米を会津の酒屋さんが買ったり使ったりすることは考えられない。なぜなら古来の対立相手ですから」
高尾直さんは、安倍首相が直接言葉に出していない本当の気持ちや意向を感じ取って瞬時に通訳をしたのです。外交において、直接訳してしまうと逆の意味に取られてしまう可能性もあるので怖いですね。
3、安倍首相の「意図をくみ取る」
4月26日でのホワイトハウス日米首脳会談で、トランプ大統領は今回の来日について日程的に難しいと話していましたが、安倍首相の言葉の意図をくみ取って高尾直さんが通訳した結果、トランプ大統領の心を動かすこととなりました。
安倍首相の言葉
陛下がご退位されて新天皇が即位されるのは200年ぶり
初のお客さまがトランプ大統領ご夫妻になる
今から楽しみにしています
高尾直さんの通訳
and also under the new Emperor,
President Trump and Madam First Lady
will be the very first state
ジャーナリスト歳川隆雄さんによると、「アメリカには王室がないため権威に対するあこがれが強い。マダム・ファースト・レディーという王室風で知性を感じさせる表現に感銘を受けたのではないか」と言われています。
トランプ夫妻と述べたのをマダム・ファースト・レディーと、瞬時に王室風に敬語で表現したのは本当に凄いことですね。高尾直さんは安倍首相の発言の行間を読み込み、知性を感じさせる英語表現にするスーパー通訳ですね。
トランプ大統領は、6月28~29日に開かれるG20で再び来日します。また20か国の首脳も来日しますから高尾直さんの姿を見ることができるかもしれませんね。